洋書はじめ:数学

数学の講義の最初の時間だった。先生は本の紹介をした。英語の本だった。

そしてこう言った。講義の参考書としてこの英語の本をつかいます。英語だからといって心配しなくていい。数学で使う英語はたいしたことない。本当は第1章は英語、第2章はフランス語、第3章はドイツ語、第4章はロシア語なんていうような本があればいいんだけどね。君たちはそれぞれ英語以外の外国語もまなんでいるでしょう。数学の本を読むのにむずかしい外国語の知識はいりません。そして数学の本などをとにかく読むことで外国語がよめるようになる。フランス語やドイツ語の初歩しかやっていなくてもわかるので、心配しなくていい。むずかしい文学書の心情表現などを読むのもいいけれど、本当のところ、君たちは、あんまり興味ないでしょう。数学の本を読む方がたのしめるでしょう。とにかく本を読んでいれば外国語はできるようになる。きみたちは数学なんかの洋書を読む方がいいとおもう。

さっそく先生が紹介してくれた数学の本を買った。大きくて分厚い本だった。英語はThis is a pen. 程度のやさしい構文しかつかわれていなかった。もちろん、知らない単語があるので辞書をひいたけれど、それは数学用語だった。すぐにそれほど辞書を引かずによめるようになった。英語であるかどうかより、知りたい内容であることがおおきかった。知りたいために、どんどん読んだ。

そうこうするうちに専門書は外国語の本で読むようになった。日本語の教科書などよりも説明が丁寧で、分からせようとする工夫がなされていた。あつくておもかったけれど、読みやすかった。

英語の授業で英文を読めるようになったのではなく、理系の読書を通じてわたしは英文を読めるようになった。