パイプオルガン

パイプオルガンを聴きに行った。オルガンは年に何度か聴くけれど、この日は午後の演奏だった。帰宅が遅くならないので、気軽に行ける。

演奏会の前に、近くの喫茶店で紅茶を飲み、本をひらく。静かな時がながれていく。そして会場に行く。しあわせな時間。

音楽は日常の世界から非日常の世界への通り道だ。オルガンはそのための巨大な装置。演奏者ははるか高いところにすわる。そのさらに上に銀色に輝くパイプがたかくそびえたつ。暗闇の中にライトアップされたパイプは天空にのびるかのようだ。広大な空間と、わずかばかりの聴き手。バッハは異世界への音楽を意識し、その作り手としての技をきわめた。すべての準備がととのった。最初の音がひびき、一気にひきこまれていく。こちらの世界からあちらの世界へ。

演奏が終わり、落ち葉を踏みしめてあるく。ささやかだけれど、わたしにとって満ち足りた時間だった。