ストーカー

アンドレイ・タルコフスキーの映画「ストーカー」。心にふかいものをのこしてくれた映画だ。

ある地に特別の場所があった。隕石が落ちたのだろうか、あるいは宇宙人が来たのだろうか。政府は軍隊を派遣したが、誰一人戻らなかった。政府はそこを「ゾーン」と呼び立ち入り禁止にした。しかし、奇妙なうわさがあった。「ゾーン」には「部屋」と呼ばれる場所があり、そこに行くとのぞみがかなうというのだ。このため、この地にむかう人を案内するストーカーと呼ばれる人があらわれる。stalkerとは獲物を追う人といった意味だ。

ある日、ストーカーは妻が引き止めるにもかかわらず、ゾーンに出発する。依頼者は科学者と作家だと言う二人の男だった。3人は「ゾーン」をそして「部屋」を目指して出かける。そこへの道はきびしかった。境界地域にいる警備兵の目を盗み、トロッコに乗ってゾーンに侵入する。かつてそこにむかった軍隊の戦車などが朽ち果て雨ざらしになっていた。発電所の巨大な設備のあとが、緑の生い茂る廃墟となっている。ストーカーの忠告を聞かずに進もうとした作家は、どこからか聞こえてきた「止まれ」といった声で足を止める。霧が行く手をはばむ。

けれど彼らはゾーンに近づいていく。ストーカーへの質問。君は部屋に行ったことが
あるのか。彼はそれにはこたえず、ひとつの話をする。知り合いのストーカーがいた。彼は死んだ弟をよみがえらせるために「部屋」に入った。けれど、もどった後に得たのは
莫大な金だった。本当に望んでいたものは弟ではなく、金だった、ということを示された彼は、自殺した。

3人はとうとう「部屋」の前までたどりつく。すると科学者は、小型の爆弾を取り出し、「部屋」を爆破しようとする。悪意を持ったものによってここが悪用されるのをふせがなければならない、という。作家とストーカーはそれを止める。ストーカーにとってはこの「部屋」存在そのものが希望なのだ。一方、作家は言う。ここは願いをかなえる場所なんかじゃない。単なるつくり話ではないのか。部屋には本当は力などないのだ、とストーカーをなじる。

結局3人は「部屋」にはいろうとしなかった。3人はすわりこみ、だまりこむ。
「部屋」とは何なのか・・・。

彼らは戻ってくる。ストーカーは帰宅する。ストーカーは言う。「あんな作家や学者に
何がわかる。何がインテリだ。骨折り損だった。」妻は、「すこし眠った方がいいわ」とやさしくいたわる。

妻のひとりごとがながれる。「母は言いました。「ストーカーは、のろわれた永遠の囚人なのよ。ろくな子供はうまれないって・・・。」彼と結婚したら大変だろうっていうことも覚悟していました。でも好きになったんだから仕方ありません。・・・私たちはそういう運命だったんです。後悔していません。」

映像がつづく。台所。ストーカーの娘は足がわるく、あるくことができない。机の上にコップがある。娘の目がコップに向かうと、それはひとりでにうごきだす。コップは床に落ちる。手でふれずともうごかすことができる力・・・ベートーベンの歓喜の歌がながれる。少女は救世主なのか・・・。