二人のピアニスト

二人のピアニスト

西村由紀江さんと中村由利子さんのピアノを聴いた。日頃からこのお二人の音楽は良く聴いている。心の奥底のやわらかな部分にそっとはいりこんでくる。

西村さんの本を読んだことがある。すてきな本だった。ちいさかったころ、人前で話せなかった。クラスの友達ともうまくあそべなかった。ただピアノに向かうときには、自分を表現することができた。こうした性格になったのには家庭の問題もあった、と書かれていた。やがて過酷な問題をのりこえて、つよいたしかな自分をつくりあげられたのだろう。現在の西村さんは明快な話をされる。そして西村さんの音楽には強靭だけれど、とてもやわらかなものを感じる。

中村さんの音楽は、西村さんに比べると硬質な印象をうける。硬質で洗練されたきよらかさだ。エリック・サティやドビッシーと同質のひびきを感じる。

子どもだったころに、このお二人の音楽に出会えていたらよかったのに、とおもう。とはいえ、このお二人と同時代に生き、音楽を聴くことができるのはしあわせだ。ふっと、心をひらいてやわらかな部分をときはなつことができる気がする。