理系と数学系

理系という言葉があるけれど、数学系とはあまり言わない。おなじようにみられるけれど、数学が好きな人と、理科が好きな人ではかならずしもおなじではない。

中学では学校の理科には興味がもてなかった。あまりにも常識的な知識問題だけだから興味の持ちようがなかった。一方、数学はたのしかった。

高校では生物に夢中になった。最初は顕微鏡で見た細胞の絵などを書いていて興味をもたなかった。ところがしばらくすると分子生物学をならいはじめた。細胞の構造、呼吸の化学反応、光合成のしくみ、わたしは夢中になった。化学式で生命現象が説明されることにおどろいた。夢中になって問題集を解いた。一方、物理や化学はたいくつだった。小学校以来のテコや、簡単な化学式しか出てこなかった。まなぶ意味を理解できなかった。学校で紹介された本をながめても興味がもてなかった。あまりに単純に見えた。そこで生物の先生に相談にいった。先生は年配の女の先生で、常に最先端の知識を取り入れている先生だった。先生はこう言った。

これからもし理科系にすすむなら、生物ではなく物理と化学をちゃんとまなぶことをすすめます、高校の物理や化学は簡単で、ふかみが感じられないかもしれません。けれど普通の高校レベルの物理を終えた後、あなたは本格的な物理をまなぶことになるでしょう。それはいままでまなんできたものとはまったく別の世界です。数学と物理の境界がわからなくなるような世界です。高校の物理や化学で判断してはいけません。あなたは今、分子生物学に興味をもっている。そして数学が好きなのなら、生物よりもちゃんと物理と化学をまなんでおきなさい。

このアドバイスは的確だった。やがてまなぶことになる物理はすばらしい世界だった。そして高校時代、わたしは物理も化学も、問題集を解くことでまなんでいった。

数学に興味をもつ子どもと理科に興味をもつ子どもはかならずしもおなじではない。そして一般に数学好きな子どものための指導は一般にうまくなされていないようにおもう。