かもめ食堂

好きな映画。ハリウッド映画のような派手な映像や、起承転結のはっきりした物語があるわけではなく、たんたんとした日常がえがかれる。心のなかにふかくはいりこんでくる。

舞台はフィンランドの首都ヘルシンキ。ここで食堂をはじめたばかりの日本女性とそこにきた女性2人の3人の女性を中心にえがかれる。北欧デザインの清楚なテーブル、椅子、食器。登場人物の一人が日本からの着の身着のままの服から、フィンランドマリメッコの服に変わり、一気にフィンランドのあざやかな色彩にかわる。映像は北欧らしくシンプルで清潔感にあふれている。そして映画から感じる印象も透明感にあふれている。

主人公はおにぎりという簡素な食事を出す。おいしいコーヒーを入れる。そうした食が人に元気をあたえる。こどものころからしているという合気道の動きはほほえみをさそうとともに、つよいこころを感じさせる。かよっている公営プールの場面は水の透明感がうつくしい。

コミュニケーション。涙をこぼそうとする人に、声をかけるのではなく、そっとティッシュを目の前におく。人にはあえてふかくは踏み込まない。フィンランド語がわからないけれど、話を聴き、寄り添うことで人が元気になる。凛とした芯のつよさ、やさしさがつたわってくる。

設定、登場人物、色彩がシンプルに整理されている。北欧らしい透明感にあふれ、おもいでにのこっている映画だ。