歌う生物学者

高校に入って夢中になった科目のひとつが生物学だった。それまで生物は単なる暗記科目だとおもっていて、なんの興味ももたなかった。けれど、分子生物学をまなびはじめると、生命がきわめて精緻な構造とプロセスでうごいていることがわかった。化学反応が生命をつくり出している。二重らせん、呼吸回路、光合成等を夢中になってまなんだ。問題集はそれ自体が生物学の研究課題のようであり、熱中した。

あれからずいぶんながい時間がたち、生物学にふれることはなくなった。ところがこのところ、生物学者の方と話をすることがおおくなった。そんな生物学者のお一人に、シンガーソングライターの方がいる。講義、講演を聴くだけでなく、あちこちで歌を聴いたし、CDも持っている。何冊かの本も、論文も読んだ。

この先生が定年退官をむかえられるというので、最終講義にうかがった。講義だけではなく、何曲もの歌をまじえ自分の研究人生と研究を通じて得た哲学をかたられた。会場は満員で大勢の立ち見が出た。楽しく有意義な時間をすごした。