ブラームスはお好き?

サガンの小説に「ブラームスはお好き?」というのがある。主人公の39歳の女性ポールを25歳の純情な男性シモンがコンサートに誘う手紙のなかで書いたことば Aimez-vous Brahms? だ。いま、それはどうでもいい。

ブラームスの協奏曲とシンフォニーを聴きに行った。このところ雑事に追われていたけれど、一段落した。ほっとした時期に、音楽を聴きたいとおもった。交響曲1番の第4楽章、ホルンとフルートがかなでるやわらかなメロディーを聞いていると、ドイツの森のなかにまぎれこむと、こんななのではないかという気がした。幸せなひと時だった。

コンサートのあと、人通りの多い道をさけて、しずかな通りをあるいて食事に行った。パティオでの食事。店を出ると、人どおりはさらにすくなく、しずかになっていた。夜の闇のなかにショーウィンドがうかびあがる。闇と静寂のなかだからこそ光がうつくしい。きれいな時間がながれていった。