夕立

夕方、プールに行った。夕食の支度をする時間帯だからだろうか、プールにはほとんど人がいなかった。監視する人ととわずかな人がいるだけで、しずかなプールでゆっくりとおよいだ。

プールを出ると自転車に乗ってはしった。お盆やすみで人どおりがすくなくなっていた。すこしとおくまで出かけることにした。駅前には帰宅する人がいて多少の人通りがあったけれど、閉まっている店もおおく、人は閑散としていた。夕焼けもなく、夜というにはまだはやいのに、急にくらくなってきた。

ぽつぽつと雨が降り出した。やがて夕立が一気に来た。ずぶぬれになりながらも気持ちがよかった。一人、はしりつづけた。中学時代にもこんな風に雨のなかをはしっていたことがあるような気がする。・・・いろいろなことをかんがえていた。学校では、しなければならないことがいろいろあった。きっと社会人になったら、生活のためにしなければならないことをするのだろう。でも中学生だって、しなければならないことがいろいろある。人に迷惑をかけなければ何をしてもいいはずなのに、なぜあれこれいわれるのだろう。先生たちは自由ということが本当はきらいなのかもしれない。

これから何をして、どうやって生きていこう。当時は、先のことがまったく見えなかったけれど、いまはそういう不安はない。最低限生きていくことはできる。好きなことをしていこう。もう誰も気にせずにそう言える。誰に迷惑をかけるわけでもない。自分のことだけをかんがえて、いいのだ。といっても、あれこれしたいわけじゃない。ひっそりと好きなことをして、ごく簡単に、生きたいだけだ。雨の中でずぶぬれになったって、自分がいいとおもうならそれでいいのだ。プールで濡れた髪が、雨でずぶぬれになったからといって、それでいいとおもうならば、いいのだ。

雨が髪をぬらし、髪からながれおちていた。