木を植えた男
ジャン・ジオノが書いた「木を植えた男」を読んだ。この本はずっと読みたいとおもっていた。実話だという話もあったようだけれど、創作だ。舞台はジャン・ジオノがずっと過ごしたフランスの南東部。マルセイユやエクス=アン=プロヴァンスにちかい山の中だ。
物語は、ジャン・ジオノが荒れた山で出会ったひとりの男について回想するというかたちで進行する。エルゼアール・ブフィエという羊飼いは山の中でひとり暮らしている。かつては平地に農場をもち、妻と子どもがいた。けれど一人息子をうしない、やがて妻をなくす。それから彼はこの地に来て、一人暮らしていた。毎日ドングリを植える。荒れた土地に。毎日黙々と木を植える。さまざまな失敗にも会うけれど、生涯をかけて木を植えていく。
第1次世界大戦、第2次世界大戦がおとずれる。けれど彼はそれすらも知らないかのように、ひとり黙々と木を植える。語り手は兵役にとられ、戦争がおわってから、すがすがしい空気を吸いたいというおもいをもって、この地をふたたびおとずれる。以前にあるいた土地には少しずつ森ができてきていた。それから、かれはこの土地を毎年おとずれる。そのたびにこの土地はあたらしい風景を見せてくれた。荒れた土地には水が、そしてゆたかな風景がもどってくる。けれど誰も、ブフィエがこの森をつくり、土地を再生させたことをしらなかった。ブフィエは、1974年、養老院でやすらかに息をひきとった。
この小説は一人の男によってなされたというところに深いものを感じる。大勢の仲間をあつめ、それによって事柄がなされることではない。一人の男の無償の、そしてねばりづよい意思の力によって、森が再生されて行くところに感動がある。
わたしにとって2冊目のフランス語の本となった。