車谷長吉さんの訃報

小説家の車谷長吉さんが亡くなったという。奥さんが帰宅したところ、食べ物を喉に詰まらせてたおれていて、病院にいったが亡くなったとのことだ。69歳だった。

車谷さんの本にはいつもひとつのかんがえかたがながれている。人には名誉欲、食欲、性欲があり卑しい。そのことを自覚していない人はどうしようもない。わたしは死を常に意識している。子供の頃は早く死にたいとおもっていた、といったことを常に書かれていた。

高校時代小説に目覚め、小説家をこころざした。学校を卒業後、広告代理店につとめていたが、小説にゆきづまり、会社員をやめ故郷にかえった。しかし母親になじられ、そこを出る。30歳からの8年間、タコ部屋で生活したり、旅館の下足番、料理の下働きとして生活した。

この時代のことを振り返って、こんな内容のことを書いていた。同級生が30万円ぐらいもらってはたらいているときに、月に2万円ぐらいもらって生きていた。駅のホームで寝ていたこともある。料理人の下働きをしていると、普通は板前になろうという人がいるし、板前もそう見ている。けれどわたしは生きていればよかったので、ずっと下ごしらえでよかった。下足番でもよかった。人間は生きてさえいれば良いのです。当時、人の奥さんからさそわれて、3人の方とトラブルをおこしましたが、お金がなかったので、みんな逃げて行きました。

やがて、東京の編集者がさがしに来て、ふたたび東京にもどり、小説を書いた。白洲正子江藤淳らに高く評価された。その後いくつかの賞を取った。

車谷さんは、人の心の闇から出発する。エッセーも興味ぶかい。