直島:硬質な空間

瀬戸内海の直島に行った。美術の島といってよいところだ。ここで美術館や様々な作品を見てあるいた。建築家の安藤忠雄と彫刻家などとの共同作品がある。わたしが特に気に入ったのはリー・ウーファン美術館。ゆたかな自然のなかに、コンクリートで遮断された巨大な空間が出現する。この空間のなかにアーティストによる石の作品がおかれている。設置空間とともにつくりだされた美。一人この空間にはいっていった。

この島にある美術には特徴がある。安藤忠雄がコンクリートで無機質の空間をつくりそこに一つだけ作品が置かれている。灰色の硬質な壁面によって切り取られた空間のうつくしさが心地良い。

硬質な壁面にとりかこまれ、一切の外界の刺激から遮断されたとき、わたしはほっとする。グレーの壁面には一切の視覚ノイズが無い。一人になれたとおもう。

日本家屋の空間構成はこれとはちがう。ふすまや障子によって、外界とは遮断されたことにする。となりの部屋のもの音は聞こえないことにする。こうした仮のとりきめはあるけれど、実際には聞こえている。喫茶店などで話している人たちもこれとおなじだ。となりの席の人たちの話し声はきこうとおもえば聞こえてしまう。わたしはそういう空間ではリラックスできない。仮想的につくりだされた閉空間は、虚構のものだ。

どれほどおおきな空間であれ、外界から確実に物理的に隔絶され絶対的な安心感をあたえてくれる空間。ここにあるのはそうした空間だ。そして精神にこころよい緊張をしいる。自己に向き合えと言ってくる。何人かの人がいたとしても、依存するのではなく、一人一人が独立した自由な人間であれとせまってくる。

わたしはこうした空間が好きだ。ここではほっとできる。ずっといたいとおもった。